


七宝箱「花園」
Cloisonne「hanazono」



この作品を作るにあたって、まず胎を作る所から始まりました。
胎を自分で作ったのはこの作品が初めてです。なので、七宝を一から作ったという充実感がすごく大きかった作品でした。
胎を自作したので、覆輪も自作しないといけなかったりと、自分で作る物も多くなり、その分時間もかなり掛かりましたが、自分の「形」を創造することの大切さを感じられたことは大きかったと思います。
以下は製作工程になります!

作品サイズ 22×13×9(㎝) 素材 七宝、銀
製作工程は大きく分けると3工程になります。一つ目は胎を作る、二つ目は七宝を施す、三つ目は覆輪を作る、という流れです。メインは七宝の工程になりますが、胎を作る工程がその後の工程や作品の完成度に関わってくるので、常に質が求められます。

胎は銅板から作ります。面と面の接合には溶接を使い制作しました。形が決まったら釉薬留めをろう付けします。釉薬留めの材には銀を使いました。七宝箱なので、上と下の二つの形が必要です。今回は二つを同時進行で作りました。

胎が完成後、下地の釉薬を表裏に施釉し、それから植線の作業に入ります。柄は前作を参考に大きさを工夫し、柔らかい表現もできました。高さ約1.3㎜の銀線を立てていきます。植線完了後に一度焼成し、銀線を焼き付けます。

銀線の焼き付け後は色差しの工程になります。この作品のベーストーンとなる緑も、9段階のグラデーションを作り、施釉しました。釉薬は低温釉の透明色と半透明色で制作しています。

透明釉を用いる場合は積層表現が主になります。数回に分けて施釉・焼成を繰り返すことで、濁りを防ぐと同時に深い色合いを出すことができます。しかし、焼成は一瞬の間違いで全てを失うほどのリスクを持っています。
*七宝は焼成すると胎である銅が膨張し、必ず変形します。それは、従来の回転体も私の胎も同じですが、私の胎は球体ではないため、熱のかかり方が均一ではなく、今回の私が制作したような蓋物(二つを合わせる形)は七宝では避けられてきた形です。
釉薬差し・焼成ができたら、研磨の工程にうつります。砥石などを使い、表面を滑らかにし、植線を克明に浮き立たせる作業です。

七宝の作業が完成後、覆輪を作ります。覆輪は平角の純銀を使い、ろう付けを応用して作りました。完成作の印象を左右するのが覆輪です。表は鏡面にし、合口はテクスチャーを施しました。七宝の中には布を貼り、作品の完成となります。