


七宝蓋物「青流」
Cloisonne「seirilyuu」



本作では川の流れを表現しました。
水の表現に七宝の艶を使ってみたいという気持ちからできたものです。制作期間は半年でした。
前作に引き続き胎を自作した点の他に、側面を凹凸で仕上げたことが本作の特徴です。中と外とで印象を変えています。前作の経験を踏まえて、試行錯誤するのが楽しかった作品でした。
以下は制作工程です


作品サイズ 18×18×8(㎝) 素材 銅、銀、七宝釉薬
制作工程は大きく分けると3工程からなります。一つ目は胎を作る、二つ目は七宝を施す、三つ目は覆輪を作る、という流れです。前作で述べた様に胎の工程はその後の完成度を左右します。前作よりも本作は完成度が高いものになりました。


胎は銅板から作ります。面と面との接合には溶接を用いました。形が出来上がったら、釉薬留めをロウ付けします。釉薬留めの材には銀を使いました。本作においても、蓋と身とを同時に作りました。


胎が完成後、下地の釉薬を表裏に施釉します。


前作は裏に布を貼って仕上げましたが、本作は裏に色を加え、焼き仕上げにしました。


下地の釉薬を施釉後は植線の作業に入ります。本作の柄は有機的なものだったので、全体感と柔らかさを意識しながら植線しました。高さ約1.3mmの銀線を立てて行きます。植線完了後に一度焼成し、銀線を焼き付けます。


銀線の焼き付け後は色差しの工程になります。蓋の上面は6段階のグラデーションを作り、施釉しました。釉薬は低温釉の透明色と半透明色で制作しています。透明釉を用いる場合は積層表現が主になります。数回に分けて施釉・焼成を繰り返すことで、濁りを防ぐと同時に深い色合いをだすことができます。しかし、焼成は一瞬の間違いで全てを失うほどのリスクを持っています。


七宝は焼成すると胎である銅が膨張し、必ず変形します。それは従来の回転体も私の胎も同じですが、私の胎は球体ではないため、熱のかかり方が均一でなく、今回私が制作したようなへら絞りでない形は七宝では避けられてきた形です。本作では積層表現を生かして表面に凹凸を作りました。一段低い所は焼き仕上げになっています。
施釉・焼成ができたら、研磨の工程にうつります。砥石などを使い表面を滑らかにし、銀線を克明に浮き立たせる作業です。


七宝の作業が完了後、覆輪を作ります。覆輪は平角の純銀を使い、ロウ付けを用いて作りました。完成作の印象を左右するのが覆輪です。表は鏡面にし、合口はテクスチャーを施しました。覆輪をつけて、作品の完成となります。